Keep On Movin'

ブン殴られても立ち上がるブログ

自分がラップをしてる理由

深夜ダラダラとテレビを観てた。

テレビ番組で「追悼・永六輔」という名目で流してたのをチラと見た。

 

永六輔さんの著書で、「死亡診断書を書いて死んだのではなく、死者を思う心で生き続けてる、その死者を思わなくなった時、その人は死ぬのだ」みたいな文が出た時、俺の友人がふと蘇った。

 

 

 

 

そいつの名前は佐々木。サッキーって、俺は呼んでた。

 

まだmixi全盛期の時に大学のコミュニティみたいなものがあって、新設大学で第1期だった俺は、コミュ障だし入ろうと思って入った。

その時のリーダー的存在だったのが、サッキーだった。

 

サッキーは優しかった。いつも、俺を優しく見守ってくれて、手助けしてくれていた。気が効く奴だが将来への展望もきちんと視野に入れていて、大学2年か3年の時にフォトスタジオを立ち上げていた。

 

ちょうど俺がラップを始めた時と、同時期だった。

 

サッキーはいつも言っていた。

「やってんでしょ、ラップ。聞きたいな」

 

聞かせたかったけど、その時も今も、とても見せられるようなラップじゃなかった。冷やかしと捉えられてもおかしくなかったし、なら、もっとスキルを磨いて披露したかった。

 

2年辺りからコースも分かれ、会う機会が減った中で、サッキーはフォトスタジオの経営なり何なりで更に会う機会も少なくなっていった。

たまにすれ違うと、久しぶりだなぁ、何してんだよ、元気?なんて、小学校とかの同窓会みたいな話とかしかしなかった。

 

サッキーに誘われて団体のニコニコ生放送のお手伝いをした。サッキーは現場を上手く回し、手際よく、そして笑顔が絶えなかった。その時に一緒に手伝いに来てた人も、サッキーといると楽しそうだった。

 

「こいつは将来、いい酒が酌み交わせそうだな」

自然にそう思った。思ってた。

 

 

しばらく会わない日々が続いた。

学校から帰ってきたら、大学から一通のメールが来た。

 

 

「佐々木さんが亡くなりました」

 

 

嘘だろ、って思った。振り返ってないから分からないけど、確か撮影の手伝いして2〜3ヶ月前後だった。悪いイタズラだって信じたかった。

 

 

すぐ仲良かった友達に連絡した。

 

「サッキー、轢き逃げに遭ったらしい。進行方向にいた車を退けようとして行ったらそのまま…」

 

 

 

葬式に行った。

お焼香を済ませ外へ出たら葬式会社の人から、「故人の顔を拝みたい方はお並びください」と言われた。

撮影の手伝いに来てた人が来てた。

友人らしき人に「佐々木の事だからあいつが悪い事したんじゃねーの」と悪態をついていた。殴りたくなったが、現場を見てない人間にそんな事をする資格もないし、あのサッキーが浮かばれないだろうと止めた。

 

 

もうすぐ自分の番になる前に、サッキーの顔を先に拝んだ撮影の手伝いの人が戻って行っていた。俯き、次第に膝から崩れ落ち、エンエン泣いていた。

強がってたんだな、サッキーの前で…って思った。

 

顔を拝んだ。

誰だか分からなかった。正直、違う人を拝んだ気分になるくらい、サッキーだとは思えなかった。

 

涙を流せなかった。

その後家に帰宅して、風呂場で少し泣いた。本当にサッキーは死んだんだって。

何でラップを見せなかったんだろう。ラップ聞いてスゲーって高笑いして欲しかった。本当にゴメン、サッキー。

 

 

 

 

 

それから何年か経って。

未だに下手ながらラップを続けてる。

あの時多分サッキーが「ラップ見せてよ」って言わなかったら、俺も続けていないと思う。

大学の俺のラップを見たがってたのは、2人くらいしかいなかったし、サッキーは唯一の男だったから、自分は男として認めてもらいたかったんだと思う。

 

 

 

ラップをやってる、とfacebookとかで言うと、会った時に「ラップ聞かせてよ」「ヘイ、ヨー(笑)」みたいなのがチラホラ出てくる。

 

俺は絶対にやらないことにしてる。

 

馬鹿にされたからじゃなく、サッキーに見せていないからだ。

サッキーに見せないで自分のラップを他の人に見せるのは絶対に嫌だと思ったからだ。

 

いつかサッキーの実家に行き、線香を入れたいが、場所も全然知らない。

だから、見えないサッキーの姿を、ちょっと空に向けて拝んでみようと思う。

 

サッキー、空の上から見ていてくれ。大会で優勝して、酒で乾杯しような。

 

 

 

 

永六輔さんの姿をサッキーに重ね合わせたところで番組が変わりアイドルグループの番組になったのでテレビを消した。

サッキーはいま天国で何をしてるんだろう。

 

ラップ、続けます。何があろうとも。サッキーとの誓いだから。